大学で不登校支援に関する研究集会を開催しました

2015年3月27日、大学で「適応指導教室における感覚的アプローチを用いた不登校支援」研究集会を開催しました。大変遅くなりましたが、研究集会の様子を報告させていただきます。


研究集会の趣旨


学部の専門演習でアロマセラピーを履修した学生たちとアロマボランティアを始めたのが2009年。

活動のひとつが、2010年度より栃木県塩谷郡高根沢町教育委員会と連携して行っている不登校の小中学生を対象としたアロマボランティアです。

6月から翌1月まで月1回、高根沢町適応指導教室フリースペースひよこの家を訪問し、中学生や相談員の皆さまにアロマコラージュ療法やアロマクラフトをご体験いただいています。

 

この活動が平成26年度日本健康心理学会研究部会に採択されました。

本研究集会は、この研究部会主催で行われました。

 

栃木県内の適応指導教室の概要、本活動を受け容れてくださっている高根沢町の適応指導教室、およびアロマボランティアについて報告するとともに、アロマセラピーを使って実際にどのような支援を行っているか参加者に体験していただくことで、感覚的アプローチを用いた不登校支援についてご一緒に考えていただくというのが本研究集会の趣旨でした。

 

 


参加者募集、参加者内訳

 

県内の全教育委員会、および全適応指導教室に郵送でご案内をお送りしました。

 

大学や学会のHPでも参加を呼びかけました。

 

さらに読売新聞、下野新聞にも告知記事が掲載されました。

 




不登校支援に関わる教育関係者や心理関係者、各種セラピスト、健康心理学会学会員を想定していました。

 

しかしふたを開けてみると、小学校の特別支援教室の先生、特別支援学校の先生、塾講師、看護師や看護学校の先生・生徒さん、介護福祉士や社会福祉士などからもお申込みをいただきました。

 

参加者の専門分野は、教育、医療、福祉に及びました。

 

 


研究集会の構成

 

研究集会は二部構成で進めました。


第Ⅰ部

1.栃木県の適応指導教室における支援

2.高根沢町の不登校支援

3.アロマセラピーを用いた不登校支援


第Ⅱ部

1.アロマコラージュ療法

2.感覚的アプローチの意義

 


第Ⅰ部の座学では、適応指導教室とはどんなところかを知っていただくため、栃木県内の適応指導教室における支援の実態を調査した研究報告を行いました。そして高根沢町こどもみらい課の方に高根沢町における不登校支援の取り組みについてご報告いただいたあと、高根沢町のご協力を得て当研究室で行っているアロマコラージュ療法による支援活動について報告しました。


第Ⅱ部の実習では、不登校の児童生徒に対して行っているアロマコラージュ療法を実際にご体験いただきました。最後に、感覚的アプローチを用いる意義についてご一緒に考えました。



第Ⅰ部 調査・活動報告


第Ⅰ部では、まず栃木県内の全適応指導教室を対象に実施した質問紙調査の結果をもとに、適応指導教室でどのような支援が行われているか報告しました。

 

適応指導教室での支援については、文部科学省による細かな指針は決められていません。

どのような支援を行うかは、各自治体、各適応指導教室に委ねられているのです。

そこで当研究室では、2014年、栃木県内の適応指導教室の支援の実態を把握するための質問紙調査を実施しました。

有効回答は27教室中、20教室(有効回答率74.1%)でした。

 

調査の結果、各教室が独自の理念にもとづき、支援を行っていることが浮き彫りにされました。

支援の目的や目標をはじめ、時間割の有無から日々の活動内容、学習指導方法、

年間行事に至るまでその方法はバラエティに富んでいました。

相談員の雇用形態も常勤、非常勤、ボランティアなど各教室によって異なっていました。

 

次に塩谷郡高根沢町教育委員会の木村真一氏、スクールソーシャルワーカーの渡辺有香氏より、

高根沢町の不登校支援について発表していただきました。

高根沢町ではスクールソーシャルワーカーを導入し、支援にあたっています。

また「どこで学ぶか」ではなく「何を学ぶか」を理念に、

子どもたちが通ってきやすい環境づくりに努めています。

たとえば、あえて学校や教育委員会から離れた古い農家の一軒家を教室にしています。

学校に通えないのに学校を連想しやすい学校や教育委員会の近くにあっては通いにくい、おじいちゃんおばあちゃんのおうちに行くような感じで通ってほしいという願いからです。

学校給食も運ばれてきます。

 

質疑応答では「教室として使っている古民家の所有者はだれですか」といった質問がなされ、「町が借り上げ、近所の方にも手伝っていただきながら修復して開設しました」という回答がなされました。

自身も適応指導教室の先生をしているという参加者からは「うらやましい」というお声があがりました。

 

 



第Ⅱ部 感覚的アプローチ

第Ⅱ部では、不登校の中学生に対して行っているアロマコラージュ療法を実際にご体験いただきました。

いつもは2時間ぐらいかけて行っていますが、今回は時間の関係上、90分でご体験いただけるトライアルコースを実施しました。

 

また小中学生のお子さんを対象に実施することを想定して、いつものフレグランスではなくルームフレグランスを作っていただきました。

 

実習後に感覚的アプローチを用いることによる意義について発表を行い、研究会終了となりました。

 



受講後アンケート

受講後アンケートでは本当にたくさんのご感想、ご意見を頂戴しました。

ご回答から、不登校支援に関わっている方はもちろんのこと、教育、医療、福祉など専門に関わらず日々臨床の現場に携わっていらっしゃる方々が大学でご一緒に考える機会を欲していらっしゃることがひしひしと伝わってきました。

皆さまからいただいた貴重なご感想、ご意見を紹介いたします。

 

 

第Ⅰ部について

 

●アロマコラージュを適応指導教室に結び付けたこと、本当にすばらしいです。中学生と大学生のコミュニケーションが近い未来、輝いていくのはまちがいないと思います。絶対これからの時代必要です。がんばってください。(40歳代・女性)

 

●栃木県の適応指導教室の実態がわかり良かった。現状、場所、各教室の活動内容などもっと学びたいと思う。(40歳代・女性・看護師)

 

●「ひよこの家」に大変興味を持ちました。

 

●スクールソーシャルワーカーの存在を初めて知りました。1人でも多く不登校の子どもが心を休める場所を見つけてもらえるといいなと思います。(30歳代・女性)

 

●もっと詳細があると良かったです。例/地区名等(女性・ボディワークセラピスト)

 

●適応指導教室の現状やスクールソーシャルワーカーについて、ひよこの家について知ることができてよかった。名前は知っているが・・・ということばかりだったことの内容まで知ることができて貴重な報告だったと思います。(40歳代・女性・小学校教諭)

 

●「実践」することによって得られるものの大きさに感じるものがあった。言葉では難しい自己表現であっても、アロマセラピーを通してコミュニケーションを確立できることが発表の中から伝わってきて感銘を受けました。適応指導教室のあり方について実態把握のみでなく分析、今後のあり方などの研究を期待しております。今後もご活躍ください。ありがとうございました。(60歳代・女性・適応指導教室相談員)

 

●高根沢は地元なので自分の知らない内容の発表を聞けて良かった。

 

●様々な悩みやストレスから子どもたちを守るものがあり、私の住む地域においても大きく動いているのですね。(20歳代・男性・大学生)

 

●現状はとてもよくわかりました。実際の取り組みの中での様子がつかめなかったのが残念でした。(50歳代・女性・介護福祉士)

 

●新年度への切り替え時期、改めて自分の反省とやってきたことへの満足度等々を振り返りながら話をきいていました。(40歳代・女性・適応指導教室相談員)

 

●適応指導教室における調査は面白いものがあって、どのような支援によりどのような効果があるのか更に深めて研究結果が知りたくなりました。

  

●アロマコラージュ療法が教育現場においてとても有効であることが実証できたのではないでしょうか。適応指導教室が更に”ケア”の場になるような研究が進めばと思います。(20歳代・女性・適応指導教室相談員)

 

●県内の適応指導教室の実態の一部がわかって大変ためになった。高根沢町の不登校支援は大変よくやっていて感心した。(60歳代・女性・適応指導教室相談員)

 

●高根沢町の取り組み-現場「ひよこの家」を見に行ってみたいと思った。老人にも適用できるのでは?! 不登校の問題に対しての国としての姿勢が定まっていない現実を初めて知った。(60歳代・男性) 

 

●アロマコラージュ療法で子どもたちの心、身体も解放されるのが理解できました。本当にすばらしい療法だと感じました。(30歳代・女性・塾講師)

 

●大学の研究室と町やフリースクールが共に子どもを支援するために研究していることは本当にすばらしいと思いました。(50歳代・女性・教員)

 

●「適応指導教室」というところがあることを初めて知りました。「ひよこの家」はとても居心地がよさそうなところですね。(40歳代・女性・非常勤講師)

 

●親戚に不登校児がいるため、大変興味深く拝聴いたしました。地方に住んでいるため、その自治体ではどうなっているのか確認してみたいと思います。特にガイドラインがないようなので、むりむり対応を検討の上。(40歳代・女性・看護師)

 

●県内の状況がわかってよかったです。ひよこの家は心があたためる環境であると思いました。アロマセラピー体験が大学でできると聞いてぜひ参加したいので連絡がほしいです。(40歳代・男性・教員)

 

 

第Ⅱ部について

 

●自分と向き合うこのアロマコラージュは、自分の奥深い思いが外に出るとわかりました。すごく楽しい。アロマコラージュの未来に期待します。(40歳代・女性)

 

●初めてお会いする方と香り、コラージュをシェアでき、とても楽しく過ごすことができました。(40歳代・女性・看護師)

 

●コンサルタント的な関わりに大変興味を持ちました。これからのアロマコラージュ療法に大きな可能性を感じました。

 

●ルームスプレーはアルコールで作りたかった。バニラがありとてもうれしかったです。コラージュも楽しかったです。(30歳代・女性)

 

●分かっている作業ですがとても楽しく童心に帰る気分です。自分の性格、環境が出るのがよくわかりました。(女性・ボディワークセラピスト)

 

●豊かな心をもって生活することのすばらしさ、なくても生きられるかもしれないが、心を安定させる大切なアプローチだとわかりました。ストレスケアすてきです。作品の見方が勉強になりました。(40歳代・女性・小学校教諭)

 

●アロマの意外な効果を知ることができました。(女性)

 

●とても楽しかったです。無心になって豊かな時間を過ごせました。コラージュはかつて子どもたちとやった時、とても楽しそうにやっていたことを思い出しました。この提案さえ拒否された今、いる子どもたちの心の闇を感じる思いです。子どもの健康さがますます問題点だと感じております。新たな思いを持てました。ありがとうございました。(60歳代・女性・適応指導教室相談員)

 

●身近にあるアロマやフレグランスはこうしてできているんだとわかった。私生活でぜひ活用したい。

 

●生物という視点からの五感を利用した解決法といった、言葉とは違う方法での働きは良いと思います。(20歳代・男性・大学生)

 

●香りはいろいろかいでいくうちに訳がわからなくなってしまいました。久々の工作? コラージュで表現しているうちに開放されている自分を感じました。アロマの効果もあったのでしょうか。先生のお話はとてもわかりやすかったです。(50歳代・女性・介護福祉士)

 

●初めてのことばかりでした。無になって楽しく過ごしました。ありがとうございました。(40歳代・女性 適応指導教室相談員)

 

●新しい香りがあった。

 

●楽しんでしまいました。改めてアロマの世界が好きであると気づきました。(20歳代・女性・適応指導教室相談員)

 

●アロマコラージュ療法はとても楽しかった。ふだんできあいのにおいをかいであまり感動しないでいるが、自分が作ったものはひとあじ違うと思った。コラージュはネタ本がよくなく、いい写真がなかった。心がほぐれた。(60歳代・女性・適応指導教室相談員)

 

●ラスト、ミドルでの調合がよくわからなくて鼻がよくないなーと感じた。時間が足りない。感覚のとぎすまし。コラージュの部分で画材を選んでいる最中での「イメージの膨らまし」「ストーリー作り」の中での「気づき」を自分の中で発見! 奥の深さを感じた。(60歳代・男性)

 

●夢中になってしまって楽しかったです。大人も必要な取り組みとして、自分の内面の変化の気づきや自分と向き合うことのできるツールだと感じました。(30歳代・女性・塾講師)

 

●フレグランス作るいはブレンドが難しく、イメージとは少し違ってしまいましたが満足です。コラージュは楽しめました。自分の求めているものが表れているような気がしました。(50歳代・女性・教員)

 

●初めてお会いした方々ともリラックスしてうちとけられました。ルームスプレーづくりもコラージュも楽しかったです。(40歳代・女性・非常勤講師)

 

●アロマテラピーを看護援助に活かしたいと考えているため、参加しました。一方的に援助を行うのではなく、お互いに五感を使い、時間を共有することで、より大きな変化がもたらされることを学ぶことができました。(40歳代・女性・看護師)

 

●第Ⅱ部は都合で参加できませんでした。ぜひ本教室で体験してみたいと感じました。後日連絡させていただきたいと思います。(40歳代・男性・教員)

 

 

今後の研究集会へのご希望

 

●一般の方向けの研究集会、本当にありがたいです。またぜひお願いいたします。本日はありがとうございました。(40歳代・女性)

 

●アロマコラージュをもっと開いてほしいです。子どもだけではなく、大人である親を対象にと思います。(女性・ボディワークセラピスト)

 

●楽しみながらすてきなアプローチをされていることがわかりました。あっという間に時間がたってしまいました。念願の体験をさせていただきました。ありがとうございました。また参加したいです。(40歳代

女性・小学校教諭)

 

●体験や交流(参加者、企画者)ができる。社会的問題に対する学習会や解決策について。(女性)

 

●先生のご指導のなかで(発表の中で)ケースカンファレンスに結びつくようなところがありましたが、私達の子ども理解につながる集会になったらなあと希望致します。またどうぞ遊びにいらしてくださいね。お世話になりました。(60歳代・女性・適応指導教室相談員)

 

●小・中といった学生の不登校生徒への支援、および教諭の対応方法。(20歳代・男性・大学生) 

 

●アロマだけでなくハーブに関する研究集会がありましたら楽しく面白いかなと思いました。またはカラーセラピーなど。(20歳代・女性・適応指導教室相談員)

 

●脳科学。有効に生かす方法、感覚をみがく等。(30歳代・女性・塾講師)

 

●情報としてこういうものがあると知るだけでも参考になります。ありがとうございました。(50歳代・女性・教員)

 

●またぜひこの研究集会に参加したいです。(40歳代・女性・非常勤講師)

 

●アロマセラピーについて科学的な裏付けが多くうまれていくことは将来アロマセラピストとして医療現場で実践していくうえで心強いです。また新たな研究結果が出ましたら、このような会を開催していただけることを期待します。(40歳代・女性・看護師) 

  

 


年度末のお忙しいなかご参加くださいまして誠にありがとうございました。

たくさんのご感想、ご意見、大変興味深く拝読いたしました。

講座の合間や講座後の立ち話もとても楽しかったです。

いただいたご回答を参考に今後も研究集会を企画できたらと思っております。

またご一緒できますのをこころより楽しみにしております。